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内閣改造 難局打開へ実務型

8/4(金) 7:55配信

産経新聞

 安倍晋三首相が3日、内閣改造に踏み切った。“問題官庁”に再入閣組を配置するなど実務型の布陣を敷き、自ら「仕事人内閣」と命名。ただ、失墜した信頼を取り戻し支持率アップを図れるのかは不透明で、しばらく難局は続きそうだ。

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 ■文科「しっかり職員と意思疎通」

 違法な天下り斡旋(あっせん)問題や学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画問題で揺れた文部科学省。「国民の信頼が失われてきている。しっかり職員と意思疎通を図り対外的にもできる限り説明したい」。就任した林芳正文科相は会見でこう述べ、省内には「安定感があり、仕事もしやすくなるだろう」と期待感が広がった。

 課題は省内の規律回復だ。同省では、前事務次官の前川喜平氏が5月の記者会見で、獣医学部新設計画をめぐり「行政がゆがめられた」と内部告発し、首相官邸の対応を批判。同省職員がメディア取材に関連文書の存在を証言する事態が相次いだ。林氏は前川氏の言動について、「現役の文科相らの説明と食い違い、疑問を持たれる」と述べ、同省への信頼低下につながっているとの見解を示した。

 幹部の一人は「林氏は温厚な人柄で知られるが、(首相からは)組織の規律引き締めと閉鎖的な教育村の改革をミッションとして託されているはず。省内にも緊張感が出てくるのではないか」と口にする。

 一方、別の職員は「大臣が代わったぐらいで組織風土は簡単に変わらない」と指摘し、「硬直した人事制度や職員の資質など根深いところに原因があるのではないか」と漏らす。「内部文書が外部に流出したことの総括や関与した職員の処分などを行わないと、再び同じことが起きる」(中堅職員)といった声もある。

 林氏は就任早々、正念場を迎えそうだ。今月下旬には大学設置・学校法人審議会が加計学園の獣医学部新設認可の可否を答申するが、前哨戦は既に始まっている。民進党は文科省側に審査の経緯を例外的に公開するよう求めたのに対し、文科省担当者は「他の大学と同じルールでやる」と否定的な見解を示している。

 設置審の審査について、林氏は会見で「静かな環境で審査をしていただきたい。その過程について透明性をもって、丁寧に説明していきたい」と述べた。

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 ■防衛 日報問題「抜本的に対策」

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題をめぐる混乱で稲田朋美元防衛相が辞任に追い込まれたことを受け、防衛相に再起用された小野寺五典氏。省内では「安定感のある実務家タイプで、失言の恐れも少ない」と歓迎する声が多い。

 日報問題では内局の背広組と陸上自衛隊の制服組との根深い対立が浮き彫りになるなど、シビリアンコントロール(文民統制)やガバナンス(統治)への不安を露呈。文科省同様に組織の立て直しが急務で、小野寺氏は3日夜の会見で「隊員の士気を低下させかねない。抜本的な対策を講じたい」と語った。

 背広組幹部は「防衛相に何より求められているのは職員が安心して仕事に取り組むことができる環境づくりで、(小野寺氏は)適任だ」と話す。弁護士としての自負が強い稲田氏は法律論で職員を批判することが多かったのに対し、小野寺氏はじっくり耳を傾けるタイプで、「風通しの良い組織に戻してほしい」(背広組幹部)と期待される。

 小野寺氏が初めて防衛相を務め、平成26年9月の離任式で感極まり涙を流したことを鮮明に記憶している職員も多い。制服組幹部は「全力で大臣職を務めた達成感と、緊張状態からの解放感があったのだろう」と指摘し、国民と自衛官の命を預かる重責を十分に理解していると信頼を寄せる。

 土日返上で部隊を視察することも多く、「自衛官は準備に追われたが、うれしい悲鳴だった」といい、北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返す中、その経験を生かした適切な判断も求められる。ただ、前回の在任中はいわば平時で、今回は日報問題で稲田氏に加え事務次官と陸上幕僚長も辞任するという有事に当たる。政治家としての力量が試されそうだ。

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 ■法務 死刑「厳正に対処」

 テロ等準備罪を新設した改正組織犯罪処罰法の国会審議で、野党の厳しい追及にさらされた法相には、上川陽子氏が約2年ぶりに再登板することになった。

 「もう一度新しい気持ちに立ち返って、現場の意見や国民の目線を大切にしながら取り組んでいきたい」と意欲を語った上川氏。法曹出身ではないが、法務省内には「勉強熱心で視察にも積極的」(幹部)と好意的な見方が多い。

 上川氏は、前回の法相在任中に1人の死刑を執行。死刑についての考えを問われると、「法の定めに従って、慎重かつ厳正に対処したい」と述べた。

 一方、金田勝年氏は退任会見で「いろいろなことがあったが、難しい案件を乗り越えたという満足感がある」とあいさつ。テロ等準備罪をめぐる答弁が「不安定」と指摘されたが、法務省幹部は「野党の集中攻撃を受けながら、よく耐えきったと思う」と擁護した。

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 ■五輪 都知事と連携カギ

 「東京大会(五輪・パラリンピック)までちょうど3年という重要な時期。何としても大会を成功させないといけない」。3日の記者会見で抱負を語った鈴木俊一五輪相。東京都の小池百合子知事との連携をスムーズに進められるかどうかが、大会成功の鍵となる。

 都庁で3日、記者から鈴木氏の就任について問われた小池氏は「大変楽しみ。(鈴木氏が)岩手出身なので『復興五輪』も確実に進むと期待している」と歓迎。自身が国会議員時代に環境相を務めたことを踏まえ、「私の前の環境大臣は鈴木さん」と接点を強調し、2日にメールでやり取りしたことを明かした。

 鈴木氏も「小池氏は一人のキーマン。ともに環境派ということで仕事をしてきたので気心が知れている。個人的な(小池氏との)人間関係を意思疎通に生かすことができれば」と親密さをアピールした。




元の記事はこちら==>https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170804-00000068-san-pol

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